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CSRD(企業サステナビリティ報告指令)とは?日本企業の影響も

CSRD(企業サステナビリティ報告指令)とは?日本企業の影響も

サステナビリティ eu 報告書

EUが導入したCSRD(企業サステナビリティ報告指令)は、EU域内企業だけでなく、日本企業にも大きな影響を与える新たな規制です。約800社の日本企業が対応を迫られる見込みであり、サステナビリティ情報開示の枠組みとして企業の非財務情報開示に大きな変革をもたらしています。本記事では、CSRDの概要から具体的な開示基準(ESRS)の内容、そして日本企業が直面する課題と取るべき実務的対応ステップまで、日本企業の担当者にとって必要な情報を網羅的に解説します。

CSRD(企業サステナビリティ報告指令)とは?概要と背景

CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)は、企業のサステナビリティ情報開示を強化するためにEUが2021年に提案し、2022年11月に正式採択した指令です。これは従来のNFRD(非財務情報開示指令)を発展させたもので、より広範な企業を対象とし、詳細かつ標準化された報告フレームワークを確立しています。CSRDの主な目的は、企業活動がもたらす環境・社会への影響と、サステナビリティ要因が企業自体に与えるリスクの両面を開示させることにあります。この「ダブル・マテリアリティ」アプローチにより、投資家や消費者を含むステークホルダーにとって、企業のサステナビリティへの取り組みをより透明かつ比較可能にすることを目指しています。

CSRDはEUのグリーン・ディールやサステナブルファイナンス戦略の一環として位置づけられており、2050年気候中立目標の達成に向けた資金フローの転換を促進する役割も担っています。

(参照:Understanding the NFRD and Its Evolution to the CSRD|GREENOMY

適用対象企業とスケジュール

CSRDは従来の非財務情報開示制度から大幅に適用範囲を拡大し、日本企業を含む多くの企業に新たな報告義務を課しています。各企業のサイズや上場状況に応じて段階的に適用されるスケジュールも設定されており、特に日本企業は国際競争力維持のために早期の準備が求められています。

適用対象の範囲(日本企業を含む)

CSRDの適用対象は非常に広範で、以下の条件に該当する企業が含まれます。

①EU域内の大企業(従業員250人超、売上5,000万ユーロ超、総資産2,500万ユーロ超のうち2つ以上を満たす企業)
②EU域内の上場企業(一部の小規模上場企業を除く)
③EU域内に子会社または支店を持つ非EU企業(日本企業を含む)で、EU域内での年間純売上高が1億5,000万ユーロを超える企業(支店の場合は4,000万ユーロ超)

特に日本企業については、約800社がこの基準に該当すると推定され、欧州市場に進出している大手製造業、金融機関、商社などが主な対象となります。

日本企業にとっては、従来の統合報告書やサステナビリティ報告書との間にギャップがあり、特にバリューチェーン全体の情報収集や二重重要性に基づく情報開示が新たな課題となります。

(参照:DIRECTIVE (EU) 2022/2464 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL|EUR-Lex
(参照:How many companies outside the EU are required to report under its sustainability rules?|LSEG

適用開始時期と移行期間

CSRDの適用は企業規模や上場状況に応じて段階的に開始されます。

第1グループ(既にNFRD対象だったEU大企業)は2024年度(2025年報告)から適用開始。
第2グループ(NFRDの対象ではなかったEU大企業)は2025年度(2026年報告)から適用。
第3グループ(EU上場中小企業、小規模な信用機関、保険会社)は2026年度(2027年報告)から適用となりますが、上場中小企業については任意で2年間の猶予期間を選択することも可能です。

非EU企業(日本企業を含む)については、EU域内に子会社を持つ場合は2028年度(2029年報告)から、EU域内に支店のみを持つ場合は2030年度(2031年報告)から適用が開始されます。

なお、EU各国は2024年7月6日までにCSRDに関する国内法を整備する必要があり、2024年度以降に段階的に要件が施行される点が重要です。ただし、早期適用も可能であり、先進的な日本企業では既に準備を進めているケースも見られます。

(参照:Corporate sustainability reporting|European Commission

EU開示基準(ESRS)の概要とダブル・マテリアリティ

CSRD遵守のための具体的な開示基準として、EFRAG(欧州財務報告諮問グループ)が策定したESRS(European Sustainability Reporting Standards)が重要です。これらの基準は包括的な情報開示を求めており、企業はその中核概念である「ダブル・マテリアリティ」に基づいた報告を行う必要があります。

ESRS開示基準の全体像

ESRSは全12の開示基準から構成され、大きく横断的基準(Cross-cutting standards)と分野別基準(Topical standards)に分類されています。

横断的基準(ESRS 1-2)では全般的な報告原則やダブル・マテリアリティに関する開示要件が定められています。分野別基準は、環境(ESRS E1-5:気候変動、汚染、水・海洋資源、生物多様性など)、社会(ESRS S1-4:自社の労働者、バリューチェーン上の労働者、地域社会など)、ガバナンス(ESRS G1:ビジネス行動)の3分野をカバーしています。

各企業は自社の事業に関連する重要な持続可能性のリスクと機会を特定し、それに応じた戦略・目標・実績を報告することが求められます。ESRS基準はTCFDやISSBなど他の国際的フレームワークとの互換性も考慮されています。

(参照:European Sustainability Reporting Standards|Grant Thornton

ダブル・マテリアリティとは?

ダブル・マテリアリティ(二重重要性)は、CSRDの基本原則として位置づけられる中核的概念です。

具体的には、①企業の財務パフォーマンスに影響を与えるサステナビリティ要因(財務的マテリアリティ)と、②企業活動が環境・社会に与える影響(インパクト・マテリアリティ)の両方を評価・報告することを求めています。

例えば、企業は自社の温暖化・汚染・人権侵害などの悪影響と、自社が気候変動等にさらされるリスク・機会の両面で重要と判断される情報を開示する必要があります。その意義は、単に投資家向けに財務リスクを開示するだけでなく、企業の社会的責任や外部影響を可視化し、地域住民やNGOなど幅広いステークホルダーへの説明責任を果たす点にあります。

日本企業にとっては、特に社会へのインパクト評価が新たな課題となるケースが多く、二つの視点を統合したマテリアリティ評価プロセスの構築が求められています。

CSRD/ESRS対応の実務ステップと戦略的メリット

CSRDへの対応は単なる規制遵守にとどまらず、サステナビリティ経営の強化と企業価値向上の機会でもあります。特に日本企業にとっては、グローバル競争力維持のために効果的な対応戦略の構築が不可欠です。

日本企業の対応プロセスと課題

CSRD/ESRS対応の実務プロセスは主に以下の4段階で進めることが効果的です。

①準備・分析段階
自社のCSRD適用時期の確認、現状のサステナビリティ報告とのギャップ分析、報告対象範囲の特定を行います。

②体制構築段階
サステナビリティ情報の収集・管理・報告のためのガバナンス体制を整備し、取締役会レベルでの監督責任を明確化します。

③データ収集・分析段階
ESRSが要求する指標に関するデータ収集システムを構築し、バリューチェーン全体をカバーする情報収集プロセスを確立します。

④報告書作成・保証段階
収集したデータに基づきESRSに準拠した報告書を作成し、第三者保証の取得準備を進めます。

特に日本企業の場合、欧州と日本のサステナビリティ開示慣行の違いへの対応、ESG情報の一元管理体制の整備、グループ企業を含めたグローバルなデータ収集体制の構築が大きな課題となります。また、日本特有の企業文化や業務慣行を考慮しつつ、欧州基準に準拠した開示を行う必要があります。

(参照:Your Ultimate CSRD Checklist: 10 Steps for Successful Compliance|GREENOMY

戦略的メリットと企業価値向上

CSRD対応を戦略的に進めることで、規制遵守を超えた多くのビジネス上のメリットを獲得できます。まず、ESG情報開示の質向上により投資家からの評価が高まり、資金調達面での優位性が生まれます。また、サステナビリティリスクの早期特定と対応により、将来の事業リスクを低減できます。さらに、バリューチェーン全体での環境・社会影響の可視化は、サプライチェーン管理の強化や新たなビジネス機会の発見につながります。

特に日本企業にとっては、欧州市場でのビジネス継続と競争力維持のためにCSRD対応は不可欠です。先進的な日本企業では既に、CSRDをきっかけにグループ全体のサステナビリティガバナンスを強化し、サステナビリティ戦略を経営戦略の中核に位置づけることで、製品・サービスの差別化や新規市場の開拓に繋げている事例も見られます。

まとめ

CSRDはEUのサステナビリティ報告の新たな枠組みとして、グローバルに事業展開する日本企業にとって重要な経営課題です。約800社の日本企業が対応を迫られると見られており、2028年の本格適用に向けた早期の準備が不可欠です。ESRSが要求するダブル・マテリアリティの考え方に基づき、環境・社会・ガバナンスの各分野における情報開示体制の構築が求められます。日本企業にとってCSRDへの対応は、単なる規制遵守にとどまらず、グローバル市場における競争力維持、投資家評価の向上、事業リスクの低減といった企業価値向上のための戦略的機会でもあります。今後、グローバルなサステナビリティ開示基準の統合が進む中、CSRDへの適切な対応は日本企業の国際的なサステナビリティ経営の基盤構築につながるでしょう。

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