CO2排出量の計算方法|公式排出係数・実例も
CO2排出量の計算方法|公式排出係数・実例も
最終確認日:2025年12月12日

CO2排出量の計算は、企業の脱炭素経営において避けて通れない課題です。環境省の温対法(地球温暖化対策推進法)に基づく報告義務を果たすためにも、正確な排出量算定が求められています。
本記事では、CO2排出量の基本的な計算式からScope1・2・3の区分、実務で使える計算例、公式排出係数の取得方法、さらにおすすめの算定ツールまでを網羅的に解説します。初めて排出量計算に取り組む方でも、本記事を読めば必要な知識とステップが理解できる内容です。
基礎と準備:計算式・Scope(Scope1/2/3)を最短で理解
CO2排出量の計算は、基本式を理解し、Scopeの区分を押さえることからスタートします。ここでは実務で必要となる最小限の知識を効率的に習得できます。
排出量の基本式(活動量 × 排出係数)と単位合わせ
CO2排出量の計算は次の基本式で表されます。CO2排出量(kgCO2e)= 活動量 × 排出係数です。活動量とは、電力使用量(kWh)や燃料使用量(L、m³)など、実際に消費したエネルギーや資源の量を指します。排出係数は、その活動1単位あたりに排出されるCO2の量を示す数値で、環境省や電気事業者が公表しています。
計算で最も重要なのは単位の統一です。電力の場合はkWhとkgCO2/kWh、燃料の場合はLとkgCO2/L、m³とkgCO2/m³といったように、活動量と排出係数の単位を必ず合わせる必要があります。単位が異なると計算結果が桁違いになる恐れがあるため、計算前の単位確認が欠かせません。
Scope1 / Scope2 / Scope3 の定義と実務での優先順位
温室効果ガス排出量は、国際基準GHGプロトコルに基づきScope1・2・3の3つに区分されます。Scope1は自社が直接排出するCO2で、社用車のガソリン使用や工場のボイラー燃料などが該当します。Scope2は他者から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出を指します。Scope3はそれ以外の間接排出で、原材料調達から製品廃棄までサプライチェーン全体の排出を15カテゴリに分けて算定します。
実務では、まずScope1・2から着手することが推奨されます。この2つは自社で直接管理できるデータであり、算定の精度も高く保ちやすいためです。Scope3は範囲が広く複雑なため、Scope1・2の算定体制を整えた後に段階的に取り組むのが効率的です。
(参照:GHGプロトコル コーポレート基準|WRI/WBCSD)
(参照:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン|環境省)
CO2とCO2eの違い・表記ルール
CO2排出量を表記する際、「CO2」と「CO2e」の2つの用語が使われます。CO2は二酸化炭素のみを指すのに対し、CO2e(CO2 equivalent:二酸化炭素換算量)はメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)など、他の温室効果ガスも含めてCO2に換算した値を指します。実務では温室効果ガス全体を評価するため、通常はCO2eを用いて報告します。
単位表記は「kgCO2e」「tCO2e」などが一般的で、算定・報告・公表制度では「t-CO2」という表記も使われます。どの単位を使うかは報告先の要求に合わせますが、社内で統一したルールを定めておくと混乱を防げます。
(参照:温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル|環境省・経済産業省)
実務ステップ:データ収集→計算→チェック(具体例付き)
実際にCO2排出量を算定する際の具体的な手順を、データ収集から計算、検証まで順を追って解説します。実務で使える計算例とチェックポイントを押さえましょう。
データ収集チェックリスト(電力、燃料、輸送、廃棄物など)
排出量算定の第一歩は、必要なデータを漏れなく収集することです。Scope1では、社用車の燃料使用量(ガソリン・軽油)、工場やボイラーの都市ガス・LPG使用量、冷媒ガスの補充量などを集めます。Scope2では、電力会社からの請求書や検針票で電力使用量(kWh)を確認し、契約している電力会社名も記録します。
Scope3では、カテゴリごとに必要なデータが異なります。カテゴリ4(輸送・配送)なら輸送距離やトン数、カテゴリ5(廃棄物)なら廃棄物種類別の排出量、カテゴリ6(出張)なら交通手段と移動距離が必要です。データ収集時は対象期間(年度)を明確にし、月次データを年間で集計する体制を整えることが重要です。
計算例A:事務所の電力(kWh→kgCO₂e)
具体的な計算例として、オフィスの年間電力使用量が50,000kWhだった場合を見てみましょう。
【排出係数の年度対応】
電気事業者別排出係数は、報告期限までに環境省が公表した最新の確定値を使用します。例えば、令和6年度(2024年度)の排出量を令和7年度(2025年度)7月末までに報告する場合、その時点で公表されている最新の係数(令和5年度実績)を使用します。
| 報告年度 | 算定対象年度 | 報告期限 | 使用する排出係数 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 令和5年度(2023年度) | 令和6年7月末 | 報告期限までに公表された最新の確定値 |
| 令和7年度 | 令和6年度(2024年度) | 令和7年7月末 | 報告期限までに公表された最新の確定値 |
| 令和8年度 | 令和7年度(2025年度) | 令和8年7月末 | 報告期限までに公表された最新の確定値 |
※特定事業所排出者の場合。特定輸送排出者は6月末日。
※排出係数の公表時期や適用ルールの詳細は、環境省「電気事業者別排出係数一覧」の注記を必ず確認してください。
【計算例】
契約電力会社が東京電力エナジーパートナーで、メニュー別係数(残差)を使用する場合を想定します。温対法の報告には、環境省が公表する「電気事業者別排出係数一覧」の確定値を使用します。本記事では計算例として0.000431 t-CO₂/kWh(0.431 kg-CO₂/kWh)を使用しますが、実際の算定時は必ず環境省公表の最新確定値を確認してください。
計算式:50,000 kWh × 0.000431 t-CO₂/kWh = 21.55 t-CO₂e
【係数の種類と精度】
| 係数の種類 | 使用条件 | 精度 |
|---|---|---|
| メニュー別係数(残差) | 契約メニューが特定でき、残差係数が公表されている場合 | 高 |
| 基礎係数 | 再エネ証書等の環境価値を別途報告する場合 | 高 |
| 参考値(事業者全体) | メニュー不明だが電力会社は特定できる場合 | 中 |
| 代替値 | 電力会社の係数が未公表の場合 | 低 |
※電力会社が自社で公表する速報値と、環境省が公表する確定値は異なる場合があります。温対法の報告には必ず環境省の確定値を使用してください。
※代替値は年度により変動します。算定時は環境省の最新公表値を確認してください。
計算例B:車両・輸送(軽油・ガソリン)
社用車で軽油を年間2,000L使用した場合の計算例です。令和6年度報告以降の軽油排出係数は2.62 kgCO2/L(2.62 tCO2/kl)です。
計算式:2,000 L × 2.62 kgCO2/L = 5,240 kgCO2e(5.24 t-CO2e)
揮発油(ガソリン)の場合は2.29 kgCO2/Lを使用します。なお、令和6年度報告から燃料名称が「ガソリン」から「揮発油」に変更されています。
【実務での落とし穴】
最も多いミスは燃料の種類を誤認することです。レギュラーガソリンとハイオクは同じ排出係数ですが、軽油は異なります。また、電気自動車の充電は電力使用量として扱うためScope2で計算し、Scope1とは区別します。燃料購入時のレシートや給油記録を確実に保管し、車両ごとに燃料種類を管理することで計算ミスを防げます。
使用した排出係数:軽油 2.62 tCO2/kl、揮発油 2.29 tCO2/kl(令和6年度報告以降)
(出典:算定方法・排出係数一覧|環境省温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)
単位換算・よくあるミスの検証方法
単位換算は排出量計算で最もミスが起きやすいポイントです。排出係数がt-CO2/kWh表記の場合、結果はt-CO2となりますが、kgCO2/kWh表記なら結果はkgCO2です。1 t(トン)= 1,000 kg(キログラム)なので、必要に応じて換算します。また、都市ガスはm³(立方メートル)、LPGはkg単位が一般的で、それぞれ対応する排出係数を使用します。
検証方法としては、前年度との比較が有効です。事業規模が大きく変わっていないのに排出量が10倍や1/10になっている場合、単位ミスの可能性が高いです。計算結果を複数人でチェックし、活動量・排出係数・単位がすべて正しいか確認するダブルチェック体制を構築しましょう。
公式係数・Scope3対策・ツールの使い分け
正確な排出量算定には最新の公式排出係数の使用が不可欠です。ここではScope3の実践的なアプローチとともに、効率的なツール活用法を解説します。
環境省・GHGプロトコル等の係数の取得方法
環境省の排出係数は「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」公式サイトで入手できます。トップページの「算定方法・排出係数一覧」から、燃料種別、電力、熱、輸送など各カテゴリの最新係数をダウンロード可能です。電気事業者別排出係数は毎年更新されるため、算定年度に対応した係数を必ず使用してください。
GHGプロトコルの係数やガイダンスは公式サイトから入手します。日本国内の算定では環境省の「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」も有用で、Scope3算定用のデータベースや業種別の原単位が公開されています。
(出典:温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度|環境省)
(出典:グリーン・バリューチェーンプラットフォーム|環境省)
Scope3の簡易見積と算定ツール
Scope3は15カテゴリに分かれ、すべてを精緻に算定するには膨大な労力が必要です。初期段階では「購買額ベース」の簡易推計法が有効で、購買金額に産業連関表ベースの排出原単位(百万円あたりtCO2e)を乗じる方法が広く使われています。簡易推計の場合は報告書に「購買額ベースの簡易推計により算定」と記載し、重要なカテゴリは段階的にサプライヤーからの実データに切り替えて精度を向上させましょう。
算定ツールとしては、環境省が提供する「サプライチェーン排出量算定支援ツール(Excelベース)」が無料で利用でき、中小企業や算定初心者に適しています。本格的な算定・管理にはクラウド型SaaS(Zeroboard、アスエネ等)が有効で、サプライヤーとのデータ連携や電力データの自動連携が可能です。ツール選定時は、自社の事業規模、算定範囲、予算を総合的に評価することが重要です。
注意点
CO2排出量算定で実務担当者が直面する疑問点や、見落としがちな注意事項をまとめました。
よくある間違いとチェックリスト
排出量算定でよくある間違いを事前に把握し、チェックリストで確認することでミスを防げます。最も多いのは単位の取り違えで、t-CO2とkgCO2、kWhとMWhを混同するケースです。また、電力会社の排出係数は毎年変わるため、古い係数を使い続けるミスも頻発します。
以下のチェックリストを算定時に活用してください。
□ 活動量と排出係数の単位が一致しているか
□ 使用した排出係数は算定対象年度に対応しているか
□ 電力会社名と排出係数が正しく紐づいているか
□ 前年度比で大幅な増減がある場合に原因を説明できるか
□ Scope1・2・3の区分が正しいか
□ 計算式を第三者がチェックできるよう記録しているか
□ 使用した排出係数の種類(メニュー別/参考値/代替値)を記録しているか
□ 代替値を使用した場合、その理由を報告書に注記しているか
□ 使用した排出係数は算定対象年度に対応した環境省公表の確定値か
これらを確認することで、報告品質が大きく向上します。
まとめ
CO2排出量の計算は「活動量×排出係数」という基本式に基づき、Scope1・2から着手し段階的にScope3へ拡大することが実務の鉄則です。環境省の最新排出係数を使用し、単位換算に注意しながら計算を進めましょう。簡易推計から始めて徐々に精度を高め、適切なツールを活用することで効率的な算定体制を構築できます。本記事で紹介した計算例とチェックリストを活用し、正確な排出量算定を実現してください。

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