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カーボンフットプリント義務化|企業が取るべき対応ロードマップ

カーボンフットプリント義務化|企業が取るべき対応ロードマップ

カーボンフットプリント義務化|企業が取るべき対応ロードマップ

カーボンフットプリント(CFP)の義務化は、EU圏を中心に現実のものとなっています。2026年1月、EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)が本格適用を開始し、欧州電池規則ではEV用電池のCFP申告義務も段階的に適用が進んでいます。

一方、日本では2025年2月に環境省・経済産業省が「カーボンフットプリント表示ガイド」を公表しましたが、現時点では義務化ではなく推奨段階です。しかし、EU向けに輸出を行う企業や、グローバルサプライチェーンに組み込まれている企業にとって、CFP対応は待ったなしの経営課題となっています。

本記事では、義務化の現状と企業が今すぐ取るべき具体的な対応ステップを、実務的な視点から解説します。

カーボンフットプリント義務化の今と、企業が取るべき対応

欧州を中心とした義務化の流れは急速に進んでおり、企業は製品のライフサイクル全体でのCO2排出量を可視化し、報告する体制の構築が求められています。

EU CBAMの現状と企業影響

EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)は2026年1月1日に本格適用段階に入りました。対象品目はセメント、電力、肥料、鉄鋼、アルミニウム、水素の6分野で、年間50トン以上を輸入する事業者は認定申告者資格が必須です(電力・水素は閾値適用なく全量対象)。

Omnibus改正規則(Regulation (EU) 2025/2083、2025年10月20日発効)により、CBAM証書の販売は2027年2月1日から開始され、2026年分の年次申告・証書引渡しの期限は2027年9月30日となっています。

実際の排出データがない場合はデフォルト値に上乗せが課されます(2026年:10%、2027年:20%、2028年以降:30%、肥料は当面1%)。そのため、実データに基づく報告が経済的に有利です。日本企業がEUに輸出する際、輸入業者から排出データの提供を求められるケースが急増しています。

(参照:Carbon Border Adjustment Mechanism – Taxation and Customs Union|European Commission
(参照:CBAM: the start of the definitive period|Lexology

日本のCFP表示ガイドの重要ポイント(適用範囲と実務)

日本では2025年2月に環境省と経済産業省が連名で「カーボンフットプリント表示ガイド」を公表しました。このガイドは義務付けではなく、企業が積極的にCFP表示を実施できるよう支援することを目的としています。

製品・サービスのライフサイクル全体(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)の温室効果ガス排出量をCO2換算で表示する際の基準を示しており、算定方法については2023年3月公表の「カーボンフットプリント ガイドライン」および同年5月公表の「CFP実践ガイド」が詳細を規定しています。

日本では現時点で罰則を伴う義務化はありませんが、EU輸出企業や大手取引先からの要請により、事実上の対応が必要となるケースが増えています。

(出典:カーボンフットプリント表示ガイドの公表について|環境省
(出典:カーボンフットプリント ガイドライン|経済産業省・環境省

今すぐやるべき短期アクション(対象判定・データ設計・サプライヤー連携)

最優先で着手すべきは、自社製品がCBAMや取引先要求の対象になるかの判定です。対象となる場合、製品のScope1(直接排出)、Scope2(エネルギー起源間接排出)、Scope3(サプライチェーン排出)のどこまで算定するか方針を決定します。

特にScope3はサプライヤーからのデータ取得が必要で、早期に協力体制を構築することが重要です。データ収集項目の最小セット(エネルギー使用量、原材料の種類と量、輸送距離など)を定義し、社内の購買・製造・物流部門と連携してデータフローを設計します。

サプライヤーへは具体的な依頼内容と期限を明示し、段階的にデータ精度を高める計画を立てましょう。

義務化の対象と適用スケジュール(国別比較)

CFP義務化は地域や分野によって適用時期と対象範囲が異なります。EUでは既に段階的な義務化が進行中であり、日本は推奨段階ながら今後の動向に注目が必要です。

EU(CBAMのフェーズ・対象品目・2026年以降の扱い)

2026年から2034年にかけて、CBAM対象セクターへのEU ETS無償割当は段階的に縮小され、それに対応してCBAMの適用割合(CBAM phase-in factor)が拡大します。

具体的には、CBAM phase-in factorは2026年の2.5%から始まり、2027年:5%、2028年:10%、2029年:22.5%、2030年:48.5%、2031年:61%、2032年:73.5%、2033年:86%を経て、2034年に100%(=無償割当ゼロ)となります。

CBAM認定申告者の申請システム(AMM)は2025年3月31日に公開され、2026年3月31日までに申請を提出した場合は承認審査中も暫定的に輸入を継続できます。2027年末には欧州委員会がCBAMの範囲拡大(追加のETS対象セクター、下流製品、間接排出の追加)を検討する予定です。

(参照:EU CBAM enters compliance phase|International Carbon Action Partnership

欧州電池規則など分野別の先行事例(バッテリーCFPは既に段階開始)

欧州電池規則では、電気自動車用電池のCFP申告義務について「2025年2月18日」または「委任行為の発効から12ヶ月後」のいずれか遅い日から適用と規定しています。

算定方法を定める委任行為は2024年2月18日までに採択される予定でしたが、ドラフトが2024年4月~5月に公表されパブリックコメントを経た後も最終採択に至っておらず、実際の申告義務の適用開始日は委任行為の正式発効後12ヶ月となります。

EV用電池のCFP申告には第三者検証が求められ、要件を満たさなければEU市場へのアクセスに影響が生じます。

EV用電池については、委任行為発効後にCO2排出量の性能分類表示(ラベル)、さらにCFP上限値の導入が予定されています。産業用電池(2kWh超)やLMT電池も段階的に適用対象となります。サプライチェーン・デューデリジェンス義務は2027年8月18日から適用されます(当初の2025年8月から延期)。電池以外でも、エコデザイン規則など製品分野別の炭素規制が今後拡大する見込みです。

(出典:The EU battery carbon footprint rules need urgent attention|Nature Energy

日本(環境省/経産省ガイドの位置づけと今後の展望)

日本では2025年2月に「カーボンフットプリント表示ガイド」が公表されましたが、現時点では法的義務ではなく推奨の位置づけです。

2023年3月に公表された「カーボンフットプリント ガイドライン」がISO 14067やGHG Protocol product standardと整合しており、国際基準に沿った算定が可能です。経済産業省は各業界における製品別算定ルールの策定支援を実施しています。

日本政府は2050年カーボンニュートラル実現に向けてCFPの活用を重視していますが、義務化の具体的なスケジュールは未定です。ただし、EU輸出企業や大手サプライチェーンに属する企業は、取引要件として事実上の対応が必要となっています。

(出典:ライフサイクルアセスメント/カーボンフットプリント|経済産業省

実務ステップ — 0–3ヶ月 / 3–12ヶ月 / 1年〜

CFP対応は段階的なアプローチが効果的です。短期では対象範囲の特定とデータ基盤の設計、中期では算定体制の構築、長期では検証と継続的改善を進めます。以下、フェーズごとの具体的なタスクを示します。

0–3ヶ月:対象製品判定・Scope定義・最小限のデータ項目

まず自社製品がCBAM対象か、取引先からCFP開示要求があるかを確認します。対象製品が特定できたら、算定範囲(Scope1:直接排出、Scope2:電力等の間接排出、Scope3:サプライチェーン排出)を定義します。

Scope3は15カテゴリーありますが、初期段階では購入した製品・サービス、輸送・配送など影響の大きいカテゴリーに絞ることが現実的です。

次に、必要最小限のデータ項目リストを作成します。具体的には、製造拠点のエネルギー使用量(電力・燃料)、主要原材料の種類と使用量、製品の輸送距離と手段などです。

社内の関連部門(購買、製造、物流、環境)を巻き込んだプロジェクトチームを立ち上げ、データ収集の責任者を明確化することも重要です。

3–12ヶ月:算定方法・ツール選定・サプライヤー協力の仕組み作り

データ収集体制の基盤ができたら、具体的な算定方法を選択します。環境省・経産省の「CFP実践ガイド」や国際規格ISO 14067に準拠した方法が推奨されます。算定には専用ツールの導入が効率的で、市販のLCAソフトウェアやクラウドベースのCFP管理システムを検討します。

並行して、サプライヤーからのデータ取得の仕組みを構築します。サプライヤー向けに「CFPデータ提供依頼書」を作成し、必要な情報(原材料のCFP値、製造時のエネルギー使用量など)と提出フォーマットを明示します。

初回は一次データ取得が難しい場合、データベースの排出係数(二次データ)を使用し、段階的に一次データへ移行する計画を立てます。この期間中に、試算を繰り返し、データ精度を確認することも必要です。

1年〜:第三者検証・表示/CBAM対応(証書購入等)・低CFP戦略

CFP算定が安定稼働したら、信頼性向上のため第三者検証を検討します。欧州電池規則では第三者検証済みのCFP宣言書が義務となっており、CBAM対応でも検証済みデータが有利です。検証機関は、ISO 14065に基づく認定を受けた機関を選定します。

製品へのCFP表示や開示資料の作成も進めます。日本の表示ガイドでは、CFP値に加えて算定条件や範囲などの背景情報提供が推奨されています。

CBAM対象企業は、2027年2月から証書購入が必要となるため、輸入業者との連携体制を構築します。長期的には、CFP削減施策(再生可能エネルギー導入、低炭素原材料への切替、製造プロセス改善)を実行し、競争力強化につなげます。

FAQ・リスクと表現上の注意点(グリーンウォッシュ回避)

CFP対応を進める際、企業が直面する疑問や注意すべきリスクがあります。特にグリーンウォッシング(環境配慮を過度に謳う表現)は、企業の信頼性を損なう重大なリスクです。ここでは実務上の頻出質問と表現上の注意点、業種別の対応優先度を整理します。

よくある質問「即罰則か?中小は対象か?Scope3はどう扱うか?」

Q: CFP未対応で即座に罰則はあるか?

日本では現時点で罰則はありません。EUのCBAMでは、過渡期(2023~2025年)の報告義務違反には1トンあたり€10~€50の罰金が適用されました。本格適用期(2026年以降)では、CBAM証書を必要量引き渡さなかった場合、€100/トン(インフレ調整あり)のペナルティが課されます。

また、認定申告者資格を持たずに年間50トンの閾値を超えて輸入した場合は、違反の期間・重大性・意図性・繰り返しの有無・当局への協力度に応じて、標準ペナルティの3〜5倍(€300〜€500/トン)が課されます(CBAM規則Article 26(2))。繰り返し違反の場合はCBAM申告者資格の剥奪もあり得ます。

Q: 中小企業も対象か?

CBAMでは年間50トン未満の輸入は「デミニマス」として免除されており、小規模取引は対象外です(ただし電力・水素は除く)。ただし大手サプライチェーンに組み込まれている中小企業は、取引先からデータ提供を求められるケースが増えています。

Q: Scope3の扱いは?

CBAMは当初Scope1・2が中心ですが、2027年末の見直しで間接排出(Scope3)の追加が検討されています。日本のガイドラインでは、重要性に応じてScope3の主要カテゴリーを算定することが推奨されています。

(参照:European CBAM: how the mechanism will work in 2026|GMK Center
(参照:EU Adopts CBAM Simplification Regulation: 10 Key Amendments|Mayer Brown

表示文言で避けるべき表現例と正しい注釈の書き方

CFP表示では、誤解を招く表現や根拠不明な主張を避ける必要があります。

避けるべき表現例: 「カーボンニュートラル製品」(相殺手段が不明確)、「環境に優しい」(具体性欠如)、「業界最低CFP」(比較根拠が曖昧)。

推奨される表現: 「本製品のCFP:5.2kg-CO2e(Scope1・2、ISO 14067準拠、2024年算定)」のように、算定範囲、基準、時点を明示します。

日本の表示ガイドでは、他社製品との比較は同一製品カテゴリー内で、製品別算定ルールを利害関係者と協議し、3名以上の独立した外部検証を受けた場合に限定されています。背景情報(算定条件、システム境界、除外項目)はWebサイトやQRコードでアクセス可能にし、透明性を確保することが重要です。

(出典:カーボンフットプリント表示ガイド|環境省・経済産業省

業種別の優先度(自動車・電池・鉄鋼・食品等)

最優先(CBAM本格適用対応): 鉄鋼・アルミニウム・セメント製造業(CBAM対象品目)、電池メーカー(EV用電池はCFP申告の委任行為発効後12ヶ月以内に対応必須)。

高優先(2027年までに準備): 自動車メーカー(電池CFP要件の影響大)、化学・肥料業界(CBAM対象)、電力事業者(CBAM対象)。

中優先(取引先要請に応じて): 食品・飲料業界(小売・消費者の関心高い)、電子機器メーカー(サプライチェーン要請増加)、物流・運輸業(Scope3算定で需要増)。

検討段階: サービス業、建設業(製品CFPより組織CFPが先行)。

いずれの業種も、グローバル展開企業や大手取引先を持つ企業は早期対応が競争力維持に直結します。

まとめ

カーボンフットプリント義務化は、EUを中心に既に現実となっています。CBAMは2026年1月から本格適用が開始され、欧州電池規則のEV用電池CFP申告義務は委任行為の発効を待って適用が始まります。

日本企業も、EU輸出やグローバルサプライチェーンを通じて対応を迫られるケースが急増しています。

対象製品の判定、算定範囲の定義、サプライヤー連携の体制構築を段階的に進め、第三者検証とグリーンウォッシュ回避に留意しながら、低CFP戦略で競争力強化を目指しましょう。