COPとは?気候変動交渉の歴史と変遷(1995→現在)
COPとは?気候変動交渉の歴史と変遷(1995→現在)

COP(締約国会議)は、気候変動に関する国際的な意思決定の中核を担う会議体です。1995年の第1回会合から30年が経過した現在、京都議定書やパリ協定といった歴史的合意を経て、気候変動対策は新たな局面を迎えています。本記事では、COPの基本的な仕組みから重要な転換点までを年表形式で整理し、合意の種類や実行のメカニズム、そして成果と課題を客観的に解説します。2025年11月にブラジル・ベレンで開催されるCOP30に向けて、これまでの歴史を振り返り、今後の注目点を明らかにします。
COPを3分で理解する要点
この記事でわかること
COPの定義
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国が年1回集まり、気候変動対策の国際ルールを決定する会議。1995年から継続され、2025年で30回目を迎える
歴史のキーポイント
1997年の京都議定書で法的拘束力のある削減目標が導入され、2015年のパリ協定で全ての国が参加する新時代へ移行。2024年のCOP29では新たな気候資金目標(NCQG)として2035年までに年間3000億ドル規模への拡大が決定され、2025年のCOP30では各国の新たな削減目標(NDC)提出とさらに包括的な実施計画が焦点となる見込み。
成果と課題
パリ協定の普及や資金枠組みの構築など一定の成果がある一方、資金不足や実装の遅れといった構造的課題が残る。COP30(2025年11月10-21日、ブラジル・ベレン)では、各国の新たな削減目標(NDC)提出と1.5℃目標達成への具体策が主要議題となる見込み
この記事では年表を用いて、COPの仕組みと30年の歴史を分かりやすく解説していきます。
COPとは何か? — 役割と仕組みを簡潔に
COPは「Conference of the Parties(締約国会議)」の略称で、気候変動に関する国際的な政策決定機関です。
UNFCCCとCOPの関係(用語:締約国会議とは)
UNFCCCは1992年の地球サミットで採択された「国連気候変動枠組条約」の略称で、気候変動対策の国際的な法的基盤となる条約です。この条約に署名・批准した国々(締約国)が年に1度集まる会議がCOPです。1995年にドイツ・ベルリンで第1回会合(COP1)が開催されて以来、毎年継続的に開催され、2025年で30回目を迎えます。COPでは、条約の実施に関する具体的なルールや目標、資金メカニズムなどを決定します。現在、198の国・地域が締約国として参加しており、各国の交渉官、閣僚、さらにはNGOや企業代表も参加する世界最大規模の気候変動フォーラムとなっています。
会議の構成と「合意→決定→実装」の流れ
COPでの意思決定は、技術的議論から政治的合意まで段階的なプロセスを経ます。会議は通常2週間開催され、前半は技術専門家による作業部会で詳細な議論が行われます。後半には閣僚級会合が開かれ、政治的判断が必要な事項について交渉が進められます。決定は原則としてコンセンサス方式(全会一致)で採択されます。採択された決定文書は、各国が持ち帰って国内で法制化や政策実施に反映させる必要があります。しかし、ここに「合意」と「実装」のギャップが生じやすく、国際的な約束が必ずしも各国の行動に直結しないという課題があります。この実装プロセスの監視と促進も、COPの重要な役割の一つです。
年表で見るCOPの歴史:重要な転換点(1995→現在)
COPは30年の歴史の中で、いくつかの重要な転換点を経験してきました。制度設計の初期段階から、法的拘束力のある枠組みの登場、そして全員参加型への転換まで、各時代の特徴を年表とともに見ていきます。
序盤(COP1〜COP5):制度設計の土台
1995年のCOP1(ドイツ・ベルリン)では、先進国の自主的削減目標では不十分であるという「ベルリン・マンデート」が採択され、法的拘束力のある議定書を策定する方向性が定まりました。
続くCOP2(1996年、スイス・ジュネーブ)では科学的知見に基づく政策決定の重要性が確認され、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書が正式に認知されました。この時期は、どのような制度設計が気候変動対策に有効かを模索する期間でした。
COP4(1998年、アルゼンチン・ブエノスアイレス)では、途上国の参加を促す資金メカニズムの議論も本格化しました。これらの初期の会合で構築された枠組みが、後の京都議定書やパリ協定の土台となっています。
COP3(京都議定書):法的枠組みの登場と限界
1997年のCOP3(日本・京都)は、COPの歴史において最も重要な転換点の一つです。ここで採択された京都議定書は、先進国に対して法的拘束力のある温室効果ガス削減目標を初めて設定しました。具体的には、2008年から2012年の第一約束期間において、先進国全体で1990年比5.2%削減という数値目標が定められました。柔軟性メカニズム(排出量取引、クリーン開発メカニズム、共同実施)も導入され、市場メカニズムを活用した削減の道が開かれました。しかし、世界最大の排出国であった米国が批准せず、途上国には削減義務がないという構造的な限界も抱えていました。この「一部の国だけが参加する枠組み」という課題が、後のパリ協定への転換を促す要因となります。
COP21(パリ協定):全員参加型のパラダイムシフト
2015年のCOP21(フランス・パリ)で採択されたパリ協定は、気候変動対策の枠組みを根本から変えました。京都議定書のような「トップダウン型の削減義務」ではなく、各国が自主的に削減目標(NDC:Nationally Determined Contributions)を設定し、5年ごとに更新・強化していく「ボトムアップ型」の仕組みが導入されました。世界共通の長期目標として、産業革命前からの気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することが明記されました。先進国と途上国の区別を超えて、全195の締約国が参加する普遍的な枠組みが実現したことは画期的でした。また、適応策の重要性が認識され、気候変動の悪影響に対する適応能力の向上も協定の柱となりました。透明性の高い報告・レビューの仕組みも導入され、各国の進捗を国際的に確認できる体制が整いました。
最近の転換(COP26〜現在):1.5℃議論、化石燃料・Loss & Damage 等
2021年のCOP26(英国・グラスゴー)では、1.5℃目標達成への緊急性が改めて強調され、石炭火力発電の段階的削減が初めてCOP決定文書に盛り込まれました。
2022年のCOP27(エジプト・シャルムエルシェイク)では、気候変動による損失と損害(Loss & Damage)に対応する基金の設立が歴史的に合意されました。
その後、COP28(2023年)で基金の運用化に関する主要な枠組みが決定され、COP29(2024年)では基金の理事会と世界銀行の間でトラスティ(受託者)および事務局ホスティングに関する合意文書が正式に署名されるなど、寄付の受け入れ準備が整いました。恒久的な運営形態については、今後のレビューやCOPでの判断が予定されています。2023年のCOP28(UAE・ドバイ)では、初のグローバル・ストックテイク(世界全体の進捗評価)が実施され、化石燃料からの移行が明記されました。
2024年のCOP29(アゼルバイジャン・バク)では、新たな集団的定量化目標(NCQG)に関する決定が採択されました。この決定では、先進国が主導して2035年までに年間少なくとも3000億ドルの気候資金を動員する目標が設定され、さらに公的・民間を含む全ての資金源から年間1.3兆ドルへの段階的拡大を目指す「バク・ベレン・ロードマップ」が示されました。ただし、これらは数値目標であり、各国・機関による具体的なコミットメントと財源動員・実施メカニズムの構築が今後の課題となります。
これらの進展は、COPの焦点が資金動員・技術移転・実施という実務的な課題に移ってきたことを示しています。
COPで「何が決まる」のか — 合意の種類と実行ギャップ
COPでは様々な形式の文書が採択されますが、それぞれ法的な性質や拘束力が異なります。また、国際合意が各国の実際の行動に結びつかない「実装ギャップ」が大きな課題となっています。
合意文書/決定文書/NDC(国別貢献)の違い
COPで採択される文書には、主に3つのタイプがあります。
まず「合意文書」は、パリ協定のような条約レベルの法的文書で、締約国による批准手続きが必要となり、国際法上の拘束力を持ちます。次に「決定文書(Decision)」は、COPで直接採択される実施規則や方針で、条約の運用細則を定めるものです。法的拘束力は合意文書より弱いものの、締約国はこれに従うことが期待されます。そして「NDC(国別決定貢献)」は、各国が自主的に設定する削減目標と行動計画です。
パリ協定では、全ての締約国がNDCを5年ごとに提出・更新することが義務付けられていますが、目標値自体は各国の裁量に委ねられています。2025年2月10日が提出期限でしたが、期限直後の報告では13〜17カ国程度の提出にとどまったとされています(情報源により数値に差異あり)。その後も提出は徐々に増加していますが、195の締約国全体から見れば依然として少数にとどまっています。最新の提出状況はUNFCCCのNDCレジストリで確認できます。これら3種類の文書が組み合わさって、国際的な気候変動対策の枠組みが構成されています。
(参照:5 of 195 Parties to Paris Agreement Meet Deadline to Communicate New NDCs|IISD)
「決定」と「実行」が乖離する理由(モチベーション・資金・能力の差)
国際的な合意が各国の実際の行動に結びつかない理由は複数あります。第一に、各国の経済状況や政治的優先順位の違いによるモチベーションの差です。化石燃料に経済を依存する国や、経済成長を優先する途上国にとって、野心的な削減目標は短期的な利益と相反する場合があります。第二に、資金不足の問題です。途上国の多くは、再生可能エネルギーへの転換や気候変動への適応に必要な資金を自力では賄えません。COP29で合意された年間3000億ドルの目標についても、インドをはじめとする途上国は「極めて不十分」と強く批判しました。第三に、技術的・制度的な実施能力の差があります。先進国でさえ、政権交代によって気候政策が後退するケースが見られます。これらの要因が複合的に作用し、COPで決定された内容と各国の実際の排出削減量の間には大きなギャップが生じています。
成果と限界をどう評価するか — 客観的比較
30年の歴史を持つCOPは、国際的な気候変動対策の枠組みを構築してきた一方で、様々な構造的課題も抱えています。成果と限界の両面から客観的に評価することが重要です。
代表的な成果(パリ協定の普及、資金枠組みなど)
COPの最大の成果は、気候変動対策が全世界共通の課題として認識され、制度化されたことです。パリ協定は195の締約国すべてが参加する普遍的な枠組みとなり、1.5℃目標という明確な指針を国際社会に与えました。資金面では、緑の気候基金(GCF)や適応基金といった国際的な資金メカニズムが整備され、途上国への支援の道筋が開かれました。COP27(2022年)で損失と損害基金の設立が歴史的に合意され、COP28(2023年)で運用化の枠組みが決定されました。COP29(2024年)では基金理事会と世界銀行の間で受託者・ホスティングに関する主要合意文書が署名され、寄付受け入れの準備が整ったことで、気候変動の影響を最も受けやすい国々への直接支援への道筋が開かれました。また、企業や金融機関による気候関連情報開示が進み、民間資金の気候投資への流入が加速しています。さらに、5年ごとのグローバル・ストックテイクという評価メカニズムにより、世界全体の進捗を定期的に確認できる体制が確立されました。
(参照:The Paris Agreement|UN Climate Change)
構造的課題(資金不足、公平性、実装の遅れ)
一方で、COPには深刻な構造的課題が存在します。最大の問題は資金不足です。COP29で設定された2035年までの年間3000億ドルの目標は、従来の1000億ドルから3倍になったものの、これは「目標値」であり各国の具体的なコミットメントと実施メカニズムの構築が不可欠です。また、途上国が実際に必要とする額には遠く及ばず、インフレを考慮すると実質的な増加幅は限定的との指摘もあります。公平性の問題も深刻で、歴史的に最も多くの温室効果ガスを排出してきた先進国と、排出は少ないが影響を最も受ける途上国との間の責任分担が依然として不明確です。実装の遅れも顕著で、現在のNDCを全て達成しても1.5℃目標の達成は困難という分析が示されています。COP29では、前年のCOP28で合意された化石燃料からの移行に関する議論が後退し、多くの国が「約束の後退」と批判しました。さらに、コンセンサス方式の意思決定により、一部の反対国が野心的な合意を阻止できる構造も課題として指摘されています。
短期〜中期で注視すべきポイント
2025年11月10-21日にブラジル・ベレンで開催されるCOP30は、各国の新たなNDC提出と実装計画が主要議題となります。特に注目すべきは、主要排出国が1.5℃目標に整合する野心的なNDCを提出するかどうかです。2035年までに2019年比で60%の排出削減が必要とされており、各国がこの水準に見合う目標を設定できるかが焦点です。また、ブラジルが主導する「熱帯林永続ファシリティ」(1250億ドル規模)の立ち上げや、炭素市場の国際ルール整備も重要なテーマです。また、NCQG で設定された資金目標(2035年までに3000億ドル、最終的に1.3兆ドル規模)の具体的な動員メカニズムと各国のコミットメントが示されるかが、途上国の行動を左右する鍵となります。アマゾン地域での初開催となるCOP30は、自然と気候の関連性を強調する絶好の機会でもあります。
(参照:The evidence is clear: the time for action is now. We can halve emissions by 2030.|IPCC)
参考年表
インタラクティブな年表を作成しました。主要なCOP会議の年次、開催地、重要な合意内容を時系列で視覚化しています。
年表の主要ポイント一覧
| 年 | COP | 開催地 | 主要な成果 |
|---|---|---|---|
| 1995 | COP1 | ベルリン | 「ベルリン・マンデート」採択。先進国の自主的削減では不十分と認識し、法的拘束力のある議定書策定への道筋を決定 |
| 1997 | COP3 | 京都 | 「京都議定書」採択。先進国に法的拘束力のある削減目標を初設定(2008-2012年に1990年比5.2%削減)。排出量取引など市場メカニズムも導入 |
| 2001 | COP7 | マラケシュ | 「マラケシュ合意」で京都議定書の実施細則を決定。米国の離脱表明後も、国際枠組みの継続を確認 |
| 2009 | COP15 | コペンハーゲン | 「コペンハーゲン合意」。2℃目標と途上国支援(年間1000億ドル)が提示されるも、法的拘束力のある合意には至らず |
| 2015 | COP21 | パリ | 「パリ協定」採択。全195締約国参加の普遍的枠組みへ転換。1.5℃/2℃目標設定、NDC(自主的削減目標)制度導入、5年ごとの更新義務化 |
| 2021 | COP26 | グラスゴー | 「グラスゴー気候合意」で1.5℃目標維持を確認。石炭火力削減が初めてCOP文書に明記。炭素市場ルール(6条)も合意 |
| 2022 | COP27 | シャルムエルシェイク | 「損失と損害(Loss & Damage)基金」の設立で歴史的合意。COP28で運用化の枠組み決定、COP29で世界銀行との主要合意文書署名により寄付受け入れ準備が整備 |
| 2023 | COP28 | ドバイ | 初の「グローバル・ストックテイク」実施。化石燃料からの「移行(transitioning away)」が史上初めて明記。再エネ3倍化目標も合意 |
| 2024 | COP29 | バク | 「バク気候統一協定」採択。新気候資金目標(NCQG)として2035年までに先進国主導で年間少なくとも3000億ドル、公私資金を含め1.3兆ドルへの拡大を目指す数値目標を設定 |
| 2025 | COP30 | ベレン | 【開催予定:11月10-21日】アマゾン地域初開催。新NDC提出・評価、1.3兆ドル資金動員の具体化、熱帯林永続ファシリティ設立が焦点 |
この年表は、COPが30年かけて「一部の先進国による削減義務」から「全世界参加型の気候行動」へと進化してきた過程を示しています。
まとめ
COPは30年の歴史を通じて、気候変動対策の国際的な枠組みを構築してきました。京都議定書からパリ協定への転換により、全ての国が参加する普遍的なシステムが実現し、資金メカニズムや透明性の仕組みも整備されました。しかし、現状のNDCでは1.5℃目標達成には不十分であり、資金・実装の両面で大きな課題が残されています。
2025年11月のCOP30では、各国の新NDCが1.5℃目標に整合しているか、そして資金動員の具体的道筋が示されるかが焦点となります。アマゾンでの開催は、自然と気候の統合的アプローチを推進する絶好の機会です。国際交渉の進展とともに、各国・各主体の実際の行動が問われる重要な年となるでしょう。

気候変動対策は、国際交渉だけでなく企業や個人の具体的な行動によっても推進されます。例えば、ハバリーズのサステナブル紙パックミネラルウォーターは、ペットボトル比でプラスチック使用量を60%削減し、FSC認証100%再生可能紙素材を採用。独自のリサイクル回収システムで「紙から紙への再生」を実現し、COPでも重視されるサーキュラーエコノミーを実践しています。マイボトルとの併用で、さらに効果的なプラスチック削減が可能です。