マイクロプラスチック問題と対策|個人・企業ができる具体策も
マイクロプラスチック問題と対策|個人・企業ができる具体策も

私たちの身の回りにあるプラスチック製品が、微細な粒子となって環境を汚染している「マイクロプラスチック問題」。海洋生物の体内から検出され、人体への影響も懸念される中、世界中で対策が急務となっています。本記事では、マイクロプラスチックの基礎知識から最新の規制動向、そして個人や企業が今すぐ実践できる具体的な対策まで、包括的に解説します。日常生活の中でできる小さな行動の積み重ねが、地球環境を守る大きな力となることを、ぜひ知っていただければ幸いです。
マイクロプラスチック問題とは何か?
マイクロプラスチックは、私たちが日常的に使用するプラスチック製品から生まれる微細な粒子です。その発生源は多岐にわたり、身近な製品に潜んでいます。
マイクロプラスチックの定義と分類
マイクロプラスチックとは、直径5mm以下の微細なプラスチック粒子の総称です。これらは大きく「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」の2種類に分類されます。一次マイクロプラスチックは、洗顔料や歯磨き粉に含まれるマイクロビーズなど、最初から小さく製造されたものを指します。一方、二次マイクロプラスチックは、ペットボトルやレジ袋などの大きなプラスチック製品が、紫外線や波の力で劣化・分解されて生じる粒子です。どちらも環境中に長期間残留し、生態系に大きな影響を与える可能性があります。
代表的な種類と発生源
マイクロプラスチックには様々な種類があり、それぞれ異なる発生源を持っています。マイクロビーズは、スクラブ洗顔料やボディソープ、歯磨き粉などのパーソナルケア製品に研磨剤として配合されていましたが、現在は多くの国で規制が進んでいます。マイクロファイバーは、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維製の衣類を洗濯する際に大量に流出し、1回の洗濯で数十万本もの繊維が排水に混入することが報告されています。また、農業用のマルチフィルムや包装材から生じるプラスチックフィルムの破片も、土壌や水系への重要な汚染源となっています。
日常生活での発生メカニズム
私たちの日常生活において、マイクロプラスチックは想像以上に身近なところで発生しています。プラスチック廃棄物の劣化プロセスは、主に紫外線による光分解と物理的な摩耗によって進行します。海岸に打ち上げられたペットボトルは、太陽光と波の作用で徐々に細かく砕け、最終的にはマイクロプラスチックとなって海に戻っていきます。家庭では、洗濯機から排出される合成繊維や、食器洗いスポンジから剥がれ落ちる微細な粒子、さらには歯磨き時のマイクロビーズなど、様々な経路で下水道へと流出しています。これらの粒子は下水処理場で大部分は除去されますが、最終的には一部が河川や海洋へと流れ込んでいるのが現状です。
マイクロプラスチックが引き起こす影響と課題
マイクロプラスチックは、環境・健康・経済の3つの側面で深刻な問題を引き起こしています。海洋生物の体内から検出されるだけでなく、人間の血液や肺からも発見されており、その影響は生態系全体に及んでいます。また、漁業や観光業への経済的損失も看過できない規模に達しています。
環境への影響:海洋・河川生態系へのダメージ
マイクロプラスチックは、海洋・河川に生息する生物に深刻な影響を与えています。プランクトンから大型魚類まで、あらゆるサイズの生物がマイクロプラスチックを餌と誤認して摂取しており、消化管の閉塞や栄養失調を引き起こしています。特に懸念されるのは、食物連鎖による生物濃縮です。小魚が摂取したマイクロプラスチックは、それを捕食する大型魚に蓄積され、最終的に人間の食卓に上る魚介類にも高濃度で含まれることになります。また、マイクロプラスチックの表面には有害物質が吸着しやすく、これらの化学物質も同時に生物体内に取り込まれるという二次的な汚染も問題視されています。
健康リスク:人体への取り込みと有害物質の吸着
人体へのマイクロプラスチックの侵入経路は、飲料水、食品、さらには呼吸による大気中の粒子まで多岐にわたります。マイクロプラスチックの表面には、PCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシン、重金属などの有害化学物質が高濃度で吸着することが知られています。これらの物質は内分泌かく乱作用や発がん性を持つものも多く、長期的な健康影響が懸念されています。最近の研究では、人間の血液、肺、胎盤からもマイクロプラスチックが検出されており、炎症反応や免疫機能への影響について世界中で研究が進められています。
社会経済的課題:漁業・観光業への損失と回収コスト
マイクロプラスチック汚染は漁業や観光業に深刻な社会経済的損失をもたらしています。たとえば、アジア太平洋経済協力(APEC)地域では、海洋ゴミによる経済損失は2015年時点で年間約112億米ドルに達し、このうち観光業が約64億米ドル(約7,700億円)、漁業・養殖業が約15億米ドル(約1,800億円)の損失を被っていると推計されています。また、世界全体で見ると、観光および漁業・養殖業への影響を合わせた経済損失は年間約60億~190億米ドル(約7,000億~2兆2,000億円)に達すると報告されています。観光業においても、ビーチの汚染によるイメージ低下で観光客が減少し、地域経済に深刻な影響を及ぼしています。さらに、下水処理施設の高度化や海洋清掃活動など、マイクロプラスチックの除去・回収にかかるコストは年々増大しており、自治体の財政を圧迫しています。これらの経済的損失は、最終的に税金や商品価格に転嫁され、社会全体で負担することになります。
(参照:APEC「Update of 2009 APEC Report on Economic Costs of Marine Debris to APEC Economies」(2020))
マイクロプラスチック対策の最新動向
世界各国でマイクロプラスチック問題への対策が本格化しており、法規制の強化や技術開発が急速に進んでいます。日本でも環境省を中心に削減目標が設定され、企業による自主的な取り組みも広がっています。海外では洗濯機へのフィルター義務化など、より踏み込んだ規制も導入されています。
日本国内の法規制と行政の取り組み
日本では2018年6月に改正された「海岸漂着物処理推進法」(平成30年6月22日施行)において、法律上初めてマイクロプラスチック対策が明確に位置づけられました。環境省は「プラスチック資源循環戦略」を策定し、「2030年までに一次プラスチックごみ(ワンウェイプラスチック)の発生量を25%削減する」目標を掲げています。自治体レベルでは、東京都環境局が「マイクロプラスチック削減に向けたグッドプラクティス集」を公開し、瀬戸内海沿岸の4県が共同で海洋プラスチックごみ対策プロジェクトを推進しています。環境省の実証実験では、現在の下水処理施設で95~99%程度のマイクロプラスチックが除去可能ですが、雨天時の合流式下水道での迂回放流など、完全除去には課題が残されています。
海外の法規制事例:マイクロビーズ禁止・フィルター義務化
欧米を中心に、マイクロプラスチック対策の法規制は日本より一歩進んでいます。米国では2015年に「マイクロビーズ禁止法」が成立し、2017年7月から洗い流される化粧品へのマイクロビーズ添加が全面禁止されました。
EUでは、2019年のSUP指令で使い捨てプラスチック製品の削減を推進し、さらに2023年10月17日に発効したREACH附属書XVII改正により、マイクロプラスチックの段階的禁止が開始されました。リンスオフ化粧品は2027年10月、洗剤・ワックス類は2028年10月、農業資材は2028年から2031年、リーブオン化粧品は2029年10月と、製品カテゴリーごとに禁止時期が設定されています。洗濯機対策では、フランスが2025年1月から新品洗濯機へのフィルター搭載を義務化、オーストラリアは2030年7月までに段階的導入を目指しています。
(参照:EU: REACH Annex XVII restriction on microplastics was published|TÜV SÜD)
企業・団体の先進事例と技術ソリューション
民間企業も積極的に取り組んでいます。全国清涼飲料連合会は「2030年までにボトルtoボトル比率50%宣言」を掲げ、日本コカ・コーラやサントリーなど主要メーカーが100%リサイクルPET導入を推進し、一部製品では既に50%の循環率を達成しています。スポーツウェアブランドでは、特殊加工技術により実験室条件下で洗濯時のマイクロファイバー流出を50%以上削減する技術を開発。下水処理技術でも95~99%の除去率が報告されていますが、さらなる技術改善が求められています。
個人・企業ができる具体的マイクロプラスチック対策
マイクロプラスチック問題の解決には、一人ひとりの行動変容が不可欠です。日常生活での小さな工夫から、企業レベルでの本格的な取り組みまで、すぐに実践できる対策は数多くあります。ここでは、今日から始められる具体的なアクションプランを紹介します。
個人がすぐに始められるライフスタイル改善
マイクロプラスチック削減の第一歩は、使い捨てプラスチックの使用を減らすことです。マイバッグ、マイボトル、マイ箸の持参は基本中の基本ですが、さらに踏み込んで、量り売り店舗の利用や詰め替え商品の選択も効果的です。
化粧品(洗い流しタイプのスクラブ入り製品)を選ぶ際は、成分表示を確認しましょう。近年、国内大手メーカー製の一般消費者向け洗顔料や歯磨き粉からはマイクロビーズ(PE、PPなど)はほぼ撤廃されましたが、海外製品や業務用スクラブ(研磨剤)には依然としてマイクロビーズが含まれている場合があります。購入時には成分表示を確認し、「ポリエチレン」「ポリプロピレン」「ポリメチルメタクリレート」などの表記がないか注意しましょう。最近では「マイクロプラスチックフリー」認証マークも登場しており、選択の目安になります。また、天然素材の衣類を選ぶことで、洗濯時のマイクロファイバー流出を大幅に削減できます。
家庭内での排出抑制策:洗濯・排水対策
洗濯時のマイクロファイバー流出を抑制するために、市販の後付けマイクロファイバーフィルター(外付けホース接続タイプや洗濯槽内設置タイプ)を利用する方法があります。製品によって異なりますが、50~90%程度のマイクロファイバー捕捉効果が報告されており、価格帯は3,000円~15,000円程度が一般的です。海外では洗濯機への搭載義務化も進んでおり、日本でも今後同様の規制が検討される可能性があります。導入にあたっては、各製品の除去率やランニングコスト(フィルター交換・清掃頻度)を比較検討しましょう。洗濯時は、水温を下げる、洗濯時間を短縮する、柔軟剤の使用を控えるなどの工夫も有効です。キッチンや浴室では、排水口用のメッシュフィルター(100円ショップでも購入可)を設置し、食器洗いスポンジは天然素材のものに切り替えることで、プラスチック粒子の流出を防げます。
企業が取り組むべきチェックポイント
企業のマイクロプラスチック対策は、製品開発から廃棄まで全工程での見直しが必要です。商品開発では、生分解性素材への切り替えや、マイクロプラスチックを発生させない設計を検討しましょう。サプライチェーン管理では、調達先の素材選定基準を明確化し、パッケージングは最小限に抑えつつリサイクル可能な素材を採用することが重要です。CSR・ESG報告では、「2030年までにマイクロプラスチック排出量50%削減」といった具体的な数値目標を設定し、進捗を定期的に開示することで、ステークホルダーからの信頼を獲得できます。また、従業員への環境教育や、取引先との協働プログラムの実施も、企業全体での取り組み強化につながります。
まとめ
マイクロプラスチック問題は、環境・健康・経済に大きな影響を及ぼす地球規模の課題です。しかし、個人の日常的な行動変容と企業の積極的な取り組みによって、確実に削減することができます。マイバッグの持参、洗濯機フィルターの設置、天然素材製品の選択など、今すぐできることから始めましょう。一人ひとりの小さな行動が集まれば、大きな変化を生み出せます。未来の地球環境を守るため、今日から一歩を踏み出しませんか。

なお、日常の飲料水選びも重要な対策の一つです。例えば、ハバリーズの紙パックミネラルウォーターのように、プラスチックボトルを使わない選択肢も増えています。紙パックは再生可能な森林資源から作られ、リサイクルも容易なため、マイクロプラスチックの発生源を断つことができます。毎日の水分補給から、環境に配慮した選択を始めてみてはいかがでしょうか。