近畿経済産業局よりインタビュー取材

矢野玲美 remiyano

近畿経済産業局が運営するWEBメディアにてインタビュー取材記事がリリースされました。

事業承継や第二創業、起業といったテーマでハバリーズ代表の矢野玲美がお話しています。

https://next-innovation.go.jp/renovator/presspost/interview_havarys/

【インタビュー Vol.52】国内初、紙パックナチュラルウォーターで業界を革新(株式会社ハバリーズ 代表取締役社長 矢野 玲美氏)

市販されている「水」といえば、容器は「ペットボトル」。それが当たり前だった日本で、2020年8月に国内初の「紙パックの水」が発売された。株式会社ハバリーズが製造する「ハバリーズ」だ。発売されるやいなや、環境配慮の意識が高い企業や行政から多くの支持を受けている。

近年、世界中でSDGsの取り組みが推進され、日本でもレジ袋をはじめとする「脱プラ」の動きがあるが、このような社会情勢も追い風となった。

 

「海外では紙パックの水は普通に売られている。チャンスだと思った」と話すのは、代表取締役社長の矢野玲美氏だ。家業はペットボトルの水をOEMで製造・販売する事業を行っていたが、第二創業として「徹底的に環境配慮した」という紙パックウォーターの開発に挑戦。株式会社ハバリーズを立ち上げた。

包材のリサーチ・調達、製造工場の選定・交渉、またリサイクル回収や寄付に始まり、ニッチな市場を見据えたブランディング、メディアを大いに活用した“空中戦”での営業戦略など、矢野氏が情報収集し、考え抜き、行動に移したという。

 

綿密な事業戦略や水業界の課題、第二創業を成功させるために活用した家業の資源、今後の事業展開などについて、矢野氏に語ってもらった。

 

ハバリーズ HAVARY'S 矢野玲美 株式会社ハバリーズ

「ペットボトルの水」事業の家業を継ぎ、第二創業として「紙パックの水」事業に挑む

 

Q. もともとはお母様が経営されていた株式会社アクアテック羽馬禮を継がれたんですよね。そちらはどんな会社で、矢野さんはいつ頃から事業に関わられていたのでしょうか。

 

A. 大分県の羽馬礼という地域は私の祖母が住んでいるところです。この場所を中心に複数の水源を持っており、母が工場を造ってミネラルウォーターの製造・販売を始めました。自社ブランドは持たずに、取引相手先のブランド名で製造を行うOEM事業がメインです。

 

当時、私は技術系の商社に勤めていたので、営業したり資料を作ったり部分的なお手伝いだけをしていました。ただ、うっすらと「母の事業を承継するんだろうな」と思っていました。

代表になったのは2018年ですが、年齢も25歳と若かったですし、まだ商社に勤めていて海外出張も多かったこともあり、はっきりとした「社長就任・交代」というよりは、現場にサポートしていただきながら段階的に継いだという感じですね。

 

Q. その後、第二創業で紙パックのナチュラルウォーター「ハバリーズ」を製造・販売する株式会社ハバリーズを立ち上げられたわけですが、どういうきっかけだったんでしょうか。

 

A. 勤めていた会社がエネルギー開発や灌漑システムなどの技術系商社で、中東(ドバイ)やヨーロッパに滞在する機会が多かったんです。その時に海外、特に欧米では、紙パックの水が普通に売られているのを見て、日本にはまだないことに気づきました。また、脱プラスチックの動きが加速してるにも関わらず、ライフスタイルのなかでペットボトルの水しか選択できないことに違和感を感じていました。

 

ミネラルウォーターは差別化やブランディングが難しいアイテムで、競争が激しい業界です。差別化が難しいために価格競争しかなく、業界的に価格崩壊の傾向がありました。

 

当社も他社と同じく、価格崩壊の中でどれだけ工夫をしても限界があると感じていました。なおかつ業界の古い体質も改善したい点がたくさんあったので、紙パックの水は、いろいろな意味で“チャンス”だと思ったんです。

 

貴重な日本の水源を使用した製品を供給している各メーカーが激しい価格競争にのみ込まれ、薄利で経営をせざる得ない状況に違和感を感じていました。日本は世界のなかでも豊富な水資源に恵まれているので、その価値になかなか気づいてもらえないのかもしれません。美味しい日本のミネラルウォーターが本質的に価値あるものとして評価されるにはどうしたら良いのかという気持ちでした。

矢野玲美 remiyano ハバリーズ HAVARY'S 株式会社ハバリーズ

マーケティングやリサーチから一人でスタート。「日本初」というスピード感を大事に、商品完成前から売り込む

 

Q. 「紙パックの水」を思いついたのはいつ頃ですか?また、実際に製造・販売にいたるまでに苦労はありましたか。

 

A. 株式会社ハバリーズの設立が2020年6月なので、思いついたのは2019年頃ですね。

いわゆる第二創業といっても、商品開発も商流もすべてゼロベースからのスタートでした。マーケティングや市場リサーチなど自分一人で始め、業界の人たちにヒアリングを始めました。

 

資材調達においても、ペットボトルと紙はまったく業界が違うので、「こんなの作りたいんですけど」と地道に問い合わせるというのをコツコツやっていった感じです。日本ではまだ誰も紙パックの水を作ったことがなかったので、包材のリサーチ・調達と製造工場のリサーチ・交渉には特に時間がかかりましたね。

 

Q. 思い立ってから行動に移されるのが早いですが、躊躇することはなかったんでしょうか。

 

A. そうですね、この事業はスピード感が大事だと思っていましたから。“日本初”の取組みだからこそ、メディア戦略もうまくいくという考えがありました。2020年の東京オリンピックは結局延期になりましたけど、その時は「絶対オリンピックに間に合わせる!」というのがモチベーションでした。

 

Q. 販売してすぐにどんどん販路を拡大されていますが、最初のお客さんはどうやってつかんだんですか?

 

A. 最初のお客さんはナチュラルローソンさんです。普通は商品が出来上がってから商談することが多いと思いますが、私はまだ商品ができていない時に、紙パックのデザインサンプルから手組みで立体模型を作り、今後の展開イメージや資料を持ち込んで提案をしました。結果的に「こういう商品を待ってました!」という担当の方のおかげで、わずか数日でナチュラルローソンさんとの契約が決まりました。

 

「1年で販路を拡大してすごいですね」とよく言われるんですが、発売する前からメディアなどに「こういう商品を作るので扱ってくださいね」「宣伝してくださいね」というアナウンスは事前に行っていました。その結果、スムーズな販路拡大につながったと思います。もちろん、コロナの影響によって断られたり白紙になったりした案件もたくさんありますけど。

ハバリーズ 株式会社ハバリーズ 矢野玲美

考え抜いたブランディングとメディア戦略で勝負をかける!

 

Q. 商品ができあがってからの営業はどのようにされてきたんですか?

 

A. 営業戦略としても古い体質を脱却しようということで、従来の販路ばかりではなく、これまでにない販路を開拓することを考えました。紙のパッケージによって、日本の水の新しい価値を改めて再認識してもらえる販路はどこか、いろいろと試行錯誤しました。その結果、ただの「水」ではなく、「環境配慮のコミュニケーションツール」として、ラグジュアリーなファッションブランドの来客アイテムや、外資系企業や上場企業での社内飲用などにご利用いただいています。

 

Q. 紙パックの水が売れるという確信はあったんですか?あったとしたら、その根拠は?

 

A. 発売前は、同じ業界の方からはネガティブな意見が多かったです。

でも、どうしたら売れるのか、どこに紙パックの水のニーズがあるのかを考え抜いたところに、ニッチな市場があることに気づき、SDGsの追い風もあったので、環境配慮のコミュニケーションツールとしてメッセージ発信をしようと思いました。

 

そういった時流を捉えたブランディングを考えていたので、取引のほとんどがBtoBです。環境配慮に意識が高い、SDGsを推進している企業や行政機関、高級ブランド、ホテルなどさまざまなクライアントと取引させて頂いています。

 

矢野玲美 ハバリーズ 株式会社ハバリーズ